ニッケイ・ルーツ:私たちの文化の足跡をたどる

ニッケイ物語 #7
ニッケイ・ルーツ:私たちの文化の足跡をたどる

みなさんにとって、ニッケイ人であることの意味は何でしょう?日々の生活の中で、ニッケイ人らしさが現れるのはどのような時ですか?日本の伝統を維持するためにどのような活動に携わっていますか?そして何より、個人または集団で、ニッケイ人のルーツとのつながりをどのように維持していますか?自分がニッケイ人だと心から感じるのは、いつ、どのような時ですか?

ディスカバー・ニッケイでは、2018年5月から9月までストーリーを募集し、11月12日をもってお気に入り作品の投票を締め切りました。全35作品(英語:22、日本語:1、スペイン語:8、ポルトガル語:4)が、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、キューバ、日本、メキシコ、ペルー、米国より寄せられました。このうち18作品は、ディスカバーニッケイへ初めて投稿してくれた方々でした。

「ニッケイ・ルーツ」シリーズに作品を投稿してくださった皆さん、どうもありがとうございました!

このシリーズでは、ニマ会と編集委員の方々に、それぞれお気に入り作品への投票と選考をお願いしました。こちらが、お気に入りに選ばれた作品です。


編集委員によるお気に入り

日本語 | 英語 | スペイン語 | ポルトガル語

日本語:

  • 150年の時を経て蘇る会津若松の魂のお茶
    馬上 直

    福田恵子さんからのコメント
    このエッセーにはロマンを感じます。はるか昔、若松コロニーがなしえなかった夢のお茶を、現代のカリフォルニアで育て、しかも新茶を味わうところまで形にしたという達成感。しかも、筆者の曽祖父が福島で茶道を教えていたという運命的な繋がり。人は、自分の祖先がどこから来て、何をやっていたのかを知ることで、自分自身が今熱中していることの理由を解明します。「そうか、だからなのか」と腑に落ちるのです。そういう意味でもこのエッセーの筆者は、カリフォルニアで自分が福島のお茶の栽培に心を尽くしていることと、曽祖父が福島でお茶を教えていたという事実を繋げることで、取り組みにより深い尊さとやりがいを感じることができているはずです。今後も末長く、福島のお茶の伝統をナパの地で大切に育み、次の世代へと引き継いでいただきたいと思います。

英語:

  • 鼓動の共有
    モリ・ワルツ

    タミコ・ニムラさんからのコメント
    今シリーズのたくさんの素晴らしいエッセイの中でも、モリ・ワルツさんのエッセイ、「鼓動の共有」は真に迫る作品で、ニッケイのルーツを探すにあたっての重大かつ困難な領域を描いています。モリさんのエッセイは、叙情的な繊細さと思い切った語りの構成を兼ね備え、自身が生まれた家族と自ら選択した家族の描写の中を簡潔かつ鮮やかに進みます。モリさんの声は、切実で明快で力強く、エッセイを締めくくる最後の大太鼓の響きの後も、ずっと鳴り響いています。

スペイン語:

  • 私の中にある日本
    アケミ・フィゲレド・イマムラ

    アルベルト・J・松本さんからのコメント
    このエッセイは、読者にイマムラさんと彼女の祖父との多くの体験を描いた心温まる物語なので、お気に入り作品に選ばせてもらった。

    イマムラさんの祖父は、カリブ海にあるキューバに移住してから日本人会や日本語学校を創設し、初期の日系コミュニティーの発展に貢献した人物である。様々な理由や状況によってそれを継続することはできなかったようだが、イマムラさんは、祖父に折り紙を教えてもらったり、童話を読んでもらったり、日本の伝統を教えてもらったことをよく覚えている。日本語が話せなくても、祖父から継承されたものがいかに大事なことであったかを噛み締めているのがこのエッセイからはよく伝わってくる。

    そしてその祖父は、今では認知症を患い、キューバの体験やスペイン語も完全に忘れてしまったが、、日本語や日本のことは覚えているという。最後に残ったのは一度も里帰りできなかった「日本」という記憶であり、一度は戻ってみたかった祖国への強い思いが、このエッセイから感じ取ることができる。

    今年(2018年)は、日本人キューバ移住120周年という節目の年である。近年は日系人の日本への留学や旅行も増えてきているが、国によっては里帰りさえも実現できない時代があったということを今の日系三世や四世にも是非知ってもらいたい。このエッセイには、一人の物語からそうした実態が見えるので、選定させてもらった。

ポルトガル語:

  • 世界を駆け巡りながら
    エリエテ・セツコ・シマブクロ・タケダ

    セリア・サクライさんからのコメント
    「植物の根」のほとんどは地中に埋まっていても、死んではいない。植物に生命を与える栄養素を取り入れる役割を持っています。目に見える部分は葉と花と実。これをもとにして、文化のことを推し量ること が出来ると思います。ルーツは死んでいない、逆に、よみがえって生命と彩りを与えます。「ニッケイ・ルーツ」に投稿された四つのエッセイはルーツの実の豊かさを表現しています。日本人のルーツは存在しながらも変っていき、新しくなっていくけれど、源からは離れない。日本人のブラジル移民を初めて手がけた水野龍さんの思い出、餅、日本の歌、折り紙を通して、それぞれの作品が日系人のルーツとのつながりを表現しています。

    私のお気に入り作品はエリエテ・シマブクロ・タケダさんの「世界を駆け巡りながら」です。このエッセイはどのように日本の伝統的な折り紙がブラジルで新しく生き生きと成長していくかを見事に書いています。ブラジル人折り紙作家のカネガエ・マリさんは日本人のおばあちゃんに教わった折り紙で、ブラジル独特のテーマ「サンバチーム」を創りました。また、このエッセイはカネガエさんの道のりを振り返って、昔の物は新しい物と調和しながら、更に、新しい物を生み出していく様子を描いています。

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編集委員

編集委員の皆さんのご協力に、心より感謝申し上げます。

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