ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2022/6/15/japanese-brazilian-food/

ニッケイ食 ー ブラジル風の和食

一世の父、二世の母を持つ私は、日系ブラジル人です。ブラジルに居ながら、日本の習慣を守る家庭で育つと、自分が何者であるのか分からなくなることもありますが、両国の良さを実感することができます。多様な文化、特に食文化、は多くのメリットをもたらしてくれます。

私は、日本料理とブラジル料理の両方を知るべきだと思います。ブラジルは、とても広大な国なので、たくさんの種類の調味料、野菜、果物があります。味も豊かで、バラェティに富んでいます。

ブラジル人の食卓には、玉ねぎとにんにくで味付けした「フェイジョン」という料理が欠かせません。母はこのブラジルの豆料理に日本の海藻を加えて作ります。味もさらに美味しくなり、豆と海藻の組み合わせで、よりヘルシーになります。

日本には健康に良い食べ物がたくさんあります。緑茶は、日系人の間だけではなく、今では、ブラジルでも一般的に親しまれています。医療専門家によると、緑茶はいろいろな効果があり健康に良いとのことです。

日本人移民はブラジル農業に大きく貢献しています。カボチャ(モランガのハイブリッド)、にがごり(日本のジロー/苦いメロンとも知られている)、日本のきゅうり、梅やワサビ(最近では生ワサビも売られている)の他に、柿、ポンカン、フジ(りんご)、梨などは、日本人がブラジルに導入、栽培したものです。

ブラジルの食べ物でもっとも人気があるのは、フェジョアーダ(肉と豆の煮込み)、シュハスコ(バーベキュー)、コシーニャ(ブラジル風コロッケ)、ブリガディロ(ブラジルのボンボン・ショコラ)、パステル(国民的揚げ物)などです。中でも大阪生まれの世花邦子(愛称マリア)は、サンパウロで最もおいしいパステルに何度も選ばれています。生地に秘訣があるそうです。

異なる文化の交流で、影響を受けないはずはありません。和食の影響を受けたブラジルならではの珍しい料理も生まれ始めています。マンゴ寿司、スターフルーツ寿司、「ビキニョ」唐辛子寿司、揚げ手巻き、ティラピアの刺身、ゴイアバーダ(グアバようかん)の春巻き、そしてヌテラ寿司などです。

ごまとクリームチーズのホットロール、揚げたケールと裏巻き、パッションフルーツジョー、クリームチーズとリーキ寿司(メイリー・マユミ・オノハラ提供)

ブラジル人の口に合うように、日本の様々な料理がブラジル風にアレンジされています。その中で私の好みは、クリームチーズとリーキ寿司ですが、イチゴとヌテラ寿司は組み合わせ的に無理があり、私は好きではありません。また、お寿司にブラジルの材料(例えば、フルーツ、カードチーズ、ミルククリーム)を付けるのも好きにはなれません。 

ブラジル人にとって、和食は薄味だと感じるようです。そのため、いろいろな材料を加えて、味を濃くしているようです。Soares, Gaudioso (2013)1によると、日本の醤油は味が薄いので、ブラジルの醤油は日本の醤油よりしょっぱくて味が濃く作られてるのとのことです。しかも違う材料で作られているとのことです。

サーモンの刺身、パッションフルーツジョー、マンゴとすりおろしたココナッツジョー、クリームチーズとサーモン寿司(メイリ-・マユミ・オノハラ提供)

アニメ「NARUTO」の影響でブラジル人の間で人気を集めたのが「だんご」です。最近では「Bentô Cake(ベントケーキ)」という、弁当箱に入ったミニケーキがユモアーたっぷりのメッセジー付きで、スイーツ店で売られています。

おばあちゃんの古いアルミ製弁当箱(メイリー・マユミ・オノハラ提供)

この「Bentô Cake」は日本で生まれた物かどうか分かりませんが、お弁当はよく日本のドラマ、アニメやマンガで見ているので、ブラジルでも普通に馴染んでいます。私の家族も車で旅行するときは、お弁当を用意します。お弁当なしでは、旅行した気分になれません。

現在、使用されている弁当箱は、アルミ製ではなく、保温弁当箱になっていますが、私たちはおばあちゃんのアルミ製弁当箱を大事にしまってあります。これも日本人ならではです。今は、使わなくなった物でも大切に保管して置くこと。この文化については、またいつか、お話ししましょう。


参考文献

1.SOARES, André Luis Ramos; GAUDIOSO, Tomoko Kimura. “Entre o sushi e o churrasco: gastronomia, culinária e identidade étnica entre imigrantes japoneses (寿司とシュハスコの間~日本人移民の美食・料理とエスニック・アイデンティティ” Habitus. Goiânia, v. 11, n.1, p. 77-94, jan./jun. 2013.

 

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このエッセイは、シリーズ「いただきます3! ニッケイの食と家族、そしてコミュニティ」の編集委員によるポルトガル語のお気に入り作品に選ばれました。こちらが編集委員のコメントです。

テルマ・シライシさんからのコメント

メイリーさんの思い出の料理や家族から受け継いだ習慣などについてのエッセイーはとても良かったです。

レシピに合わせて、現地にある食材を選び、新しい味が作り出されます。メイリーさんの家族にもこのようなレシピが代々受け継がれているのでしょう。ブラジルの国民料理の「フェイジョン」に日本の海藻を加えるレシピはとても気に入りました。私も今度、家で「フェイジョン」を作るときに試したいと思います。

ポップカルチャーの影響で日本料理はブラジルで注目されています。お寿司は現地の食材を取り入れ、新しい寿司のネタが開発されていますが、伝統的な寿司のレシピが生かされているとのこと。また、日本人がブラジルで育てた食材の多くが、このような新しい多様な組み合わせを可能にしていると、メイリーさんは述べています。

お弁当についてのお話は、家族と旅行の楽しみやおばあちゃんの思い出につながっています。特に、おばあちゃんが使っていたアルミ製の弁当箱を大事にしまってあることを聞いて、素晴らしいことだと思いました。

二つの国の影響を受けた家庭料理の味と独特のアイデンティティのお話です。

 

© 2022 Meiry Mayumi Onohara

ブラジル人 食品 日本食
このシリーズについて

第11回ニッケイ物語「いただきます3! ニッケイの食と家族、そしてコミュニティ」では、食がどのようにニッケイコミュニティをつなぐ役割をはたしているのか、代々受け継がれてきたニッケイのレシピにはどのようなものがあるのか、好きな和食やニッケイ料理は何なのかといった、いくつかのトピックについて考えてもらいました。

ディスカバー・ニッケイでは、2022年5月から9月にかけ、ニッケイ食に関するストーリーを募集し、10月31日までお気に入り作品に投票していただきました。全15作品(日本語:1、英語:8、スペイン語:6、ポルトガル語:1)が、ブラジル、カナダ、ペルー、米国から寄せられました。うち一つは、多言語による作品でした。

編集委員の方々に、これらの投稿作品を読んでいただき、お気に入り作品を選んでもらいました。また、ニマ会コミュニティの方々にも、お気に入り作品に投票をお願いしました。下記がお気に入りに選ばれた作品です。

編集委員によるお気に入り作品

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* このシリーズは、下記の団体の協力をもって行われています。 

     

     

 

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*ロゴデザイン:ジェイ・ホリノウチ

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執筆者について

 ブラジル、ウベルランディア連邦大学にて言語学と会計学を専攻。同大学で会計学修士課程の学生。父方の2世、母方の3世。父親は佐賀県出身、母親の家族は神戸出身。国語教師、現在は家業を営む。

(2022年5月 更新)

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