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ブラジルの大地を感じて作品を作る
章子さんはサントス港に降り立ったとき、「母親に抱え上げられたように感じた。大地の尊さと言うのかしら、大きなものに抱かれるような感覚が嬉しくて、嬉しくて」とつい最近のことであるかのように思い出す。その〝大地〟の欠片を使って陶芸作品を作ることは、その感覚を形にすることでもあった。
「作品を作るときは、いつも大地の力を感じていた。ブラジルにはそれがある。それを感じて、作品に込めていたの」
コチアに登り窯を建設し、手動旋盤、大地の一部である粘土、木の葉から作った釉薬を武器にして当地の芸術界に影響を与える作品群を発表した。実用とはかけ離れた球形、円筒形、卵形などの形状をしており、ブラジルの大地という母の胎内に宿る感覚を表現したかのような現代美術作品だと当地では見なされている。
「私はキレイな焼き物は作りたくなかった。外見の美しさではなく深いものを内包している作品を作りたかった。ずっと作り続けて90歳になったころ、やっとそれが見つかったと確信した。だから、もう辞めなくてはと思った。これから先は空に向かって行かなくては、つまり神様の元に向かっていく。神様に呼ばれてもいいと思った。私は仏教でもキリスト教でもない。心の中で独自の神様との関係を作った。これは宗教ではないの」。
そんな心境に至った後、脳卒中に襲われた。
弓場勇は「原始…