ディスカバー・ニッケイ

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デカセギ・ストーリー


2012年6月18日 - 2024年4月18日

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。



このシリーズのストーリー

第四十七話(前編)「帰りたくても 帰れない」

2024年4月18日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

2人の姉を持つ末っ子長男のエイジは、親に将来は医師になるよう言われ育った。姉たちは家事や両親が営むスーパーの手伝いをさせられたが、エイジだけは手伝いではなく勉強に集中するよういつも言われていた。 高校三年生になると、学校が終わるとすぐに塾へ行き、夜は自宅で勉強、週末も塾に通いテスト勉強に励むのが日課だった。 ある土曜日、遊びに来ていた3人のいとこに誘われ、エイジは塾をさぼって、リベルダーデの東洋街に行った。まるで魔法の世界に入り込んだようだった。見る物、聞く物、何もかも…

第四十六話 絵画のリハナは誰?

2024年2月27日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

27歳の誕生日にハナは結婚した。相手は3歳年下のエイジと言うハナの同級生の弟だった。 半年前、その同級生はハナを訪ねて来た。弟が日本へ出稼ぎに行くことになったが、出稼ぎに行くなら結婚してから行った方が良いと言うことになり、お嫁さん探しをしているという。同級生はすぐにハナのことを思い出し、会いに来たのだった。 2年ほど前に失恋したハナは、結婚話にはあまり関心がなかったが、、憧れの日本で暮らす機会だと思い直し、エイジと会うことにした。それからふたりは付き合い始め、日本へ出発…

第四十五話 富士子はジャポネザでよかった!

2024年1月16日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

尾崎家は大家族だった。長男と次男は結婚し、実家でそれぞれの家族と両親が皆一緒に暮らしていた。 その家で、富士子は生まれた。孫息子3人を持つ祖父は日本の女優の山本富士子の大ファンだったので、初の孫娘に富士子と名付けた。「山本富士子のように美しくて人気者になるといいな」と、家族は期待した。 富士子は明るい子に育った。しかし、高校一年生のとき、クラスメートの男子に「おまえ、オザキと逃げたんだってなぁ?」と、冷やかされた。 実は「フジコ・オザキ」は、ポルトガル語で「わたしはオ…

第四十四話(後編) 「ただいま帰りました」

2023年6月30日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

前編を読む>> 3年ぶりにブラジルへ戻ったパウロは、日曜日、子供のころから通っていた教会へ一人で向かった。 パウロの家族は教会へ行く習慣がないので、「父さんと母さんはイビラプエラ公園へジョギングに行き、妹たちはまだ寝てるにちがいない」と思っていた。 アーチ型のドアとステンドグラスの窓の教会を久しぶりに見て、懐かしく思った。中に入って、先に来ていた祖母に挨拶をして、横に座った。 礼拝が始まり、讃美歌の時間になった。よく見ると、オルガンの演奏者は妹のカレンだった!しかも…

第四十四話(前編)「ただいま帰りました」

2023年4月20日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

パウロは中学生のときから心に決めていた。「高校卒業後は、神学校へ入学し、宣教師になる」と。 両親はクリスチャンではなかったが、父方のおばあさんの影響で、パウロはクリスチャンの教育を受けた。 日曜日の朝は、バスに30分乗っておばあさんの家に行き、そこからおばあさんと2人のいとこと一緒に教会へ通った。礼拝は、大人の礼拝と子供の礼拝に分かれていたが、正午になると、皆、食堂に集まり、食事を共にして、楽しい時間を過ごした。特に、パウロは皆と話しをするのが大好きだった。 パウロは…

第四十三話 朋美もナルトも夢を追う

2023年1月30日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

日本人の父親と日系ブラジル人の母親を持つ朋美は19歳。 デカセギとして日本へ行った朋美の母親は、はじめは名古屋のパン屋さんで働いていた。そのとき近所の自転車修理店のオーナーに誘われパン屋さんを辞めて自転車修理店で働くようになった。その後すぐに2人は恋に落ち、一緒に暮らすようになった。それから、朋美が生まれて、生活は充実、安定していた。 4年前、とても残念なことに、朋美の父親が肺がんで亡くなってしまった。親子の生活は一変した。両親は正式に結婚していなかったので、自転車修理…

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このシリーズの執筆者

1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。

子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

(2023年5月 更新)