第45回 『暗愁』の訳者、前田氏にきくー その3
ハワイ生まれの日系アメリカ人2世の女性が、戦争を挟んで苦難の人生を生き抜く姿を描いた、ジュリエット・コーノ作の小説『暗愁』。10年をかけてその翻訳を手掛け、昨年末出版にこぎつけたアメリカ文学研究家の前田一平氏に、作品の魅力や日系文学などについてきいた。
ヘミングウェイとジョン・オカダ
――前田さんは、アメリ文学の古典でもあるヘミングウェイの研究をはじめアメリカ文学の研究を専門とされ、日系アメリカ人の文学の研究もされていますが、そもそもこうした文学研究をするようになったのはなぜですか。
前田:私が文学にはまり込んだのは高校生のときでした。自分は何のために生きているのか、自分が存在する理由は何かという思春期的苦悩の…