限りなく遠かった出会い
1934年19歳で単身ブラジルに移住し、81歳にブラジルで他界した父が書き残した日記や、祖父一家の体験話などをもとに、彼らのたどった旅路を、サンパウロ新聞のコラム「読者ルーム」に連載した(2003年4月~2005年8月)。そしてそのコラムをまとめ、「限りなく遠かった出会い」として、2005年に出版した。このシリーズでは、そのいくつかのエピソードを紹介する。
このシリーズのストーリー
古いフィルム(2) ドウラードス植民地事業
2013年6月5日 • 宮村 秀光
この古いフィルムには、前回記載したシーン以外に、私の一家と深い関わりのある映像が含まれている。それは父が一生を賭けたドウラードス植民地事業に関してである。今でも私の手元にこの古い映像が残っていることに、私は不思議な因縁を感じずにはおれない。 私の父母一家は、1945年にパラナ州のアプカラナ市に入った。歯の技工士の職業と、耕地周りの仮の歯医者の仕事もしていた父は、その傍ら、終戦後、勝ち組が刊行していた雑誌「光輝」(ひかり)のパラナ州支部長でもあった。 そのため、当時家…
古いフィルム(1) 歴史的政治転換期
2013年5月7日 • 宮村 秀光
あるきっかけから61年前の古いフィルムが私の手元に届いた。父が亡くなる前に古物を預けていた友人から、父が他界して数年後、私に届けられたものであった。 思いもしなかった映像に目を見張った。歯の技工士の仕事を辞めてパラナ州に移転した父が、1948年に州政府と共に企画した植民地の開拓事業に関わる記録映像であった。旧方式の35ミリのセルロイド製フィルムだったので、燃えやすい為シネマテッカ・ブラジレイラに保管してもらうことにしたが、そこの幹部の方達も映像を見て目を白黒させていた。そ…