メキシコシティのテペヤックの丘に建てられたグアダルーペ寺院は、2008年1,400万人近い巡礼者を迎えた。この数は、世界中から巡礼者が訪れるフランスのルルドの泉(800万人)、バチカンのサンピエトロ大聖堂(700万人)、ポルトガルのファティマの聖母(450万人)などと比べてもそれを上回り、世界で一番巡礼者が多く訪れたことになる。
メキシコと日本の最初の接点から今年で400年。この記念すべき節目の年にあたり、メキシコの日系コロニアは聖母グアダルーペ信仰のため、今年10月4日13時よりグアダルーペ寺院へ60周年巡礼を行う。
第二次世界大戦が終わった1949年、メキシコの日系カトリックコミュニティーはホセ・マリア・ラミレス司祭(当時)の主導により熱意と信仰心のこもった最初の巡礼が行われた。それ以来約60年に渡って毎年10月の最初の日曜日に巡礼を行っている。
1979年にラミレス司祭が亡くなってから、カルデナル・エルネスト・コリピオ・アウマダ枢機卿が、日本に11年間住んだハビエル・エスカラダ司祭を日系コロニアの司祭に任命した。エスカラダ司祭は27年に渡り我々日系コロニアの巡礼を先導し、その巡礼は活力、熱意、組織力そして秩序面からメキシコでも評判のよいものとなっていった。
その頃から日本の象徴として巡礼に次のようなものが取り入れられた。
- 努力の継続の意味をもつ折り紙の鶴をかけた繊細な強さを象徴する竹
- 若者のグループが引くたくさんの花飾りをつけた御所車や棒の上部に多くの色の花を飾りつけ、
キラキラ光る星のように浮いて見える「七夕」。また、「暁の星」や「天の門」などのマリア様への賞賛の言葉を書いた封建時代のような旗など。
また、二つある婦人会のグループは建築家故ホセ・ハンハウセンによる聖母グアダルーペの大きな絵と2002年の7月31日にメキシコで二番目の聖人となった聖サン・フアン・ディエゴの大きな絵をそれぞれ捧持する。
教会へ入るときは感動的である。2007年からは、カルデナル・ノルベルト・リベラ・カレラ枢機卿により2007年10月5日に任命されたウゴ・セルメニョ司祭が正面入り口で我々日系コロニアの巡礼者を受け入れて下さっている。セルメニョ司祭が祭壇まで私たちを案内してくださる間、西村佳子先生率いる琴のグループKasou Kaiや日系婦人会のコーラスグループコスモスの天使のような声、また、歌手中谷よしお氏の美しい声が私たちを包んでくれる。また、伝統的なきものを着た女の子たちが餅や果物など、日本の食べ物を運ぶ。OJNのメンバーはその若さと組織力を生かし、献身的に巡礼の手助けをしてくれている。
今年は巡礼60年に際し、聖母マリア・ステラ・マトゥティナ(暁の星)の肖像の写しを捧持する。日本人の守護聖母であるその絵は、日本人の最初のカトリック信者によって委託され1931年にトバルによって描かれたもので、そのオリジナルはメキシコシティのコンデサにある教会の礼拝堂に納められている。
我々の先人がこの大事な宗教行事に費やしてきた努力と献身の意識が新しい世代に受け継がれていくように、我々は何倍もの努力をしなければならない。しかし、きっとそれは末永く継承され、我々日系人の深い宗教心が日本文化特有の表現を生み、この60年で培われてきた巡礼を凌いでいくことを信じてやまない。
© 2009 Alfonso Muray