シアトル地域で活躍する若い日系人。サラ・ベーカーさんはノースシアトル・カレッジで学生自治会の会長を務め、日系市民協会(JACL)シアトル支部では来年度の支部長にも選出されている。「新三世」と答える新しい世代の日系人の姿を追ってみた。
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第二次世界大戦を境に日本人移民への呼称に「新」をつけることが多いのは良く知られている。ベーカーさんは祖母が朝鮮戦争後に米国に移民してきた。大戦後の新日系移民の三世にあたる。
いわゆる三世、四世と呼ばれる世代との違いについて、ベーカーさんは表現するのが難しいながら、「三世の多くは、彼らの親の世代の遺産について話していますが、私の場合はそれがないですね」と話す。
一方、受け継ぐ文化については類似したものがある。「他の日系人と話している時に、英語に時々日本語の単語を混ぜて話すのは、日系人の文化の一つだと考えています。例えば『This ticket is 高い』といったところです」と説明する。
若い世代の日系人は、昔の歴史や習慣に深い知識はない。「だからこそ盆踊りのような大衆的な文化行事を続けて、この先も若い世代が協力して生活できれば良いと思います」
JACLには2014年に参加した。社会正義を学ぶ高校の授業で日系関係者に誘われたことがきっかけだった。初めて参加した会議で団体申込書に署名。2週間後には奨学金をもらいサンノゼで開かれた全米大会に参加した。
JACLは現在、米国内だけで100以上の支部を持つ。一方で多くの支部で会員高齢化が進み、若い世代の取入れに苦労しているという。全米有数の支部となるシアトル支部も同様の課題を抱えている。
その中でシアトル支部は若い世代を中心に地域の他のコミュニティーや団体と協力し、マイノリティー同志の理解を深める活動を続けている。今年は当地最大のネイティブ系マックルシュート部族とのワークショップ、アジア太平洋諸島系の性的少数者を支援するイベントなどを開催してきた。
「地域の他団体団体をどのように支援するかという点もなかなか難しい」とベーカーさんは語るが、「彼らマイノリティーと同じような苦悩を味わってきたからこそ、日系人として他のコミュニティーと互いに助け合っていく必要があると感じます。助け合うことで、発言すること、立ち上がることができると思うんです」
ノースシアトル・カレッジで学士号を目指すと決めたとき、学生の代表へ立ち上がる決意を固めた。マイノリティー、女性からの声が必要だと感じたからだという。
「もっとマイノリティー、特に女性の中から立ち上がる人が必要だと思います。大学の自治会会長やJACLの支部長という風に走り続けているのは、そういう気持ちがあるからこそと思っています」
JACL新支部長の抱負として、「若い世代の会員をさらに増やして、さらに他人種のコミュニティーも支えていきたい」と語る。他のコミュニティーと協力していく日系コミュニティー。これからのシアトルではさまざまな連携を見ることができるのではないだろうか。
* 本稿は、2015年12月11日『北米報知』からの転載です。
© 2015 The North American Post / Fumika Iwasaki