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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2020/9/22/fishing-four/

フィッシング・フォー

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私が最後にハイシエラ(訳注:カリフォルニア州中東部の山脈)へ釣りの旅に出かけたのは、2019年7月7日のことでした。慌ただしい都会の日常を離れた、年に一度の家族旅行でした。釣りを家族の伝統行事にしたのは夫のジョンでした。ジョンは、子供のころからフレズノで釣りをしていて、父親と一緒に釣りをする喜びを忘れたことはありませんでした。息子のジェームズとデービッドが釣り竿を持てるようになると、ジョンはハイシエラで二人に釣りを教え、今ではそれが私たち一家の日系の伝統となりました。ジェームズとデービッドは、自動的に「フィッシング・フォー」のメンバーになり、私は名誉会員になりました。

ジョンとジェームズとデービッドは、ロサンゼルスからジューン・レイクへの5時間のドライブの計画を立て、楽しいロードトリップを実現させる名人になりました。洋服、釣り道具、アイスボックス、水、お菓子、サングラス、虫よけスプレー、日焼け止めをバンに積み、出発の準備が整いました。

最初にジェームズがロサンゼルスからモハーベまで運転し、マクドナルドで恒例の朝食をとりました。ジョンと私はコーヒー2つとビッグブレックファストをシェアし、ジェームズとデービッドはハッシュポテトと飲み物をオーダーし、朝食を済ませました。店を出る午前11時にはすでに気温は華氏90度(約32℃)まで上がっていました。

モハーベからローンパイン、インディペンデンス、ビッグ・パインを経由してビショップまでは、デービッドの運転です。私たちのお気に入りの立ち寄り先は、エリック・シャッツ・ベーカリーとマホガニー・スモークド・ミートで、ベーカリーではロシアンレーズンパンやコーヒーケーキ、チョコチップやスイスピーカン、ショートブレッドなどの各種クッキーを買いました。マホガニー・ミートでは、ジューン・レイクの山小屋での初日の夕食用に、サンドウィッチとポテトサラダを4つ買いました。他にも家に持ち帰るためのスモークベーコンを3パックとおやつ用のガーリックピスタチオを2パック購入しました。その後バンに給油し、ドライブを続けました。

最後に運転したのはジョンで、ビショップからマンモス・レイクに向かいました。マンモスに立ち寄ったのは、ボンズで食料品を買うためです。朝食と昼食用の食材と、マスが釣れなかったときのための夕食用の食材を買い、6つの買い物袋はいっぱいになりました。それから自分たちへのご褒美に、スターバックスで飲み物を買いました。その後はジョンの運転でジューン・レイクに直行し、最終目的地の山小屋#6に到着しました。ここは、私たちが3日間釣りをして過ごすときに泊まるお気に入りの山小屋です。私たちはとてもワクワクしていました!

食料品や衣服、シャッツ・ベーカリーとマホガニー・ミートで購入したスナックなどの荷物を下ろしました。私たちは長時間のドライブに疲れ、お腹も空いていたので、マホガニーで購入したサンドイッチとポテトサラダで遅い夕食をとることにしました。ジョンと私はクラシック・ターキー(七面鳥)サンドイッチ、デービッドはハムとチキン入りのカリフォルニア・キューバンサンドイッチ、ジェームズはローストビーフとスモークベーコン、ペッパージャックチーズのロデオ・サンドイッチを食べました。夕食後、男性陣は釣り竿の用意を、私はおにぎりとサンドイッチを作り、ポテトチップス、クッキー、果物、水と一緒に翌日のお弁当の用意をしました。この日の夜は、早く休みました。

7月8日月曜日、私たちはシリアルと牛乳、またはベーグルとクリームチーズに熱いコーヒーで軽い朝食をとりました。ジューン・レイクでの最初の釣り場はグラント・レイクでした。湖ではカモが泳ぎ、カモメが頭上を飛んでいきました。湖の水位は高く、マスは岩礁に姿を隠していました。釣り糸を遠くまで飛ばさなければなりませんでしたが、飛ばすたびに岩に引っかかってしまいました。蚊に刺され、熱い日差しに照り付けられて、私たちの我慢は限界に達しました。湖の周りに樹木はなく、日焼け止めローションを塗ったり虫よけスプレーをかけたりするのに忙しくしていました。それでもジェームズとジョンはマスを1匹ずつ釣り上げました。デービッドと私は収穫ゼロで、魚は餌をつつきもしませんでした。

次の釣り場は、水深が深く流れの速い小川、ラッシュ・クリークです。私たちは、川まで釣り道具を運びました。奔流と強風、マスを隠す背の高い雑草との闘いで、一匹もかからないのは無理もないことでした。

私たちは山小屋へ戻り、昼食をとり、釣った2匹の内臓を取り処理しました。ジップロックの中に水を少しだけ入れて、マスを凍らせるため冷凍庫にいれました。夕食には、マスの代わりに店で買ったローストチキンとご飯、ポテトサラダ、マカロニサラダを冷たい飲み物と一緒に食べました。デザートは果物を添えたアイスクリームでした。夕食後に私はまたお弁当を作りました。私たちは、初日の不振について話し、寝る時間まで2種類のお気に入りのゲーム、花札とクレイジーエイトをしました。その後の二晩も私たちは、マスの内臓を取って処理し、夕飯を食べ、弁当を作り、釣りについて話し、一緒にゲームをするという我が家の釣りの儀式を繰り返しました。

7月9日火曜日、私たちは車で30分かけてマンモス・レイクへ行きました。マンモス地域には、メアリー湖とジョージ湖という私たち好きな穴場が2か所あります。ジョージ湖より小さいメアリー湖には大きな岩や低い丘がありました。私たちは、おやつと水、釣り具を丘の上に運びました。土手やボート上から釣りをする人々が見えました。湖沿いの木々のお陰で前日より涼しく感じましたが、この日は蟻に刺されました。釣り糸を湖に飛ばすと、ジョンの針に大きなマスがかかりました。マスは岩や倒れた木々の間を素早く泳ぎ、糸は1本の枝に絡まって切れ、大物は逃げてしまいました。デービッドと私はそれぞれ1匹ずつ釣り、釣った魚をストリンガー(訳注:魚のえらに通すクリップのついたロープ)に引っ掛けて湖に落としました。

「熊が来るぞ!」という叫び声を聞いた時、私たちはクッキーやポテトチップスをつまみ始めていました。ジョンは、2匹のマスを掛けたストリンガーを拾い上げ、丘を駆け上っていきました。ジェームズとデービッドと私も、無事にジョンの後に続きました。すると突然、食べ物を探して歩きまわる小さい熊が目に入りました。私たちのおやつの匂いをかぎ、座って食べていましたが、犬の吠える声が聞こえると走って逃げていきました。

私たちは、車でジョージ湖に向かうことにしました。自分たちをこれ以上危険にさらすのはやめて、バンの中で昼食をとりました。ジョージ湖は、山や巨大な岩、高い木々に囲まれたメアリー湖より大きい湖です。それは絵に描いたようにとても美しく、山から大きな滝の水が紺碧の湖の中に流れ落ちていきます。遅い時間だったので気温は低く、風が吹いていました。シマリスや小鳥が食べ物を探していました。ジェームズとデービッドは2匹、私は1匹釣りましたが、ジョンは運に見放され、1匹も釣れませんでした。小さい魚は放しました。また釣れなくなってきたので、私たちは切り上げることにしました。そして荷物をまとめてマンモスの中心部に車で向かいました。

マンモス・アンティーク中古品店で買い物をして、デリシャス・キッチンというカフェで夕食を買いました。スターバックスでドリンクを注文することで、私たちは熊に遭遇した一日を乗り切りました。私たちは家族の儀式を継続し、ジョンが逃した大物について話し、ゲームをし、あっという間に寝る時間になりました。明日は、釣り出かける最後の日です。

7月10日水曜日、私たちはグラント・レイクに戻って半日釣りをしました。デービッドと私は、1匹ずつ釣りました。この日はかなり暑く、私たちはまた蚊に刺されていたので、全員一致で山小屋に戻って昼食をとることにしました。私たちはマスの内臓を取り除き、釣った魚の集計をしました。ジョンは1匹、ジェームズは3匹、デービッドは4匹、私は3匹で、合計11匹の収穫でした。魚があまりつれなかったことは気にせず、一緒に過ごした時間がどれほど楽しかったかを話しました。そしてそれでも私たちは、自分たちはフィッシング・フォーだと思っていました。残っているもので夕食を済ませ、ゲームをし、汚れた服を洗い、翌日のための荷造りを始めました。これが最後の夜でした。

7月11日木曜日、私たちは朝食をとり、山小屋の掃除をし、ごみを捨てました。残りの洋服、釣り道具、凍らせた11匹のマスでいっぱいになったアイスボックスをバンに積みました。出発の準備が整いました。順番に運転し、お気に入りの場所に立ち寄り、今回の釣りの旅のハイライトを振り返りました。ジェームズとデービッドは、母なる自然を謳歌しました。2人は、ジョージ湖の滝の美しさ、ラッシュ・クリークの流れの速さ、メアリー湖のクロクマ、グラント・レイクで泳ぐカモを思い出していました。ジョンは、釣りの静寂と忍耐を楽しんだと言い、私は、ハイシエラに静けさと平穏を見いだしました。

私たちは、より強い家族の絆を共に築き、一生の思い出を作ることを学びました。フィッシング・フォーは、永遠に私たちの日系の伝統です。私たちがいなくなっても、息子たちは一緒に釣りを楽しむ家族を持つことでしょう。そしてそれぞれの最後の旅を忘れることはないでしょう。何より最高のひと時は、帰りのドライブでした。

 

© 2020 Mary Sunada

ニマ会によるお気に入り

特別企画「ニッケイ物語」シリーズへの投稿文は、コミュニティによるお気に入り投票の対象作品でした。投票してくださったみなさん、ありがとうございました。

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ニッケイのスポーツを、ゲームの勝敗を超えて特別なものにしているのは何でしょう?あなたのヒーローである日系アスリートや、あなたのニッケイとしてのアイデンティティに影響を与えたアスリートについて書いてみませんか?ご両親の出会いのきっかけは、ニッケイのバスケットボールリーグやボウリングリーグでしたか?戦前の一世や二世の野球チームに代表される日系スポーツ史にとって重要な時代に関心はありますか?

ニッケイ物語第9弾として、ディスカバー・ニッケイでは、2020年6月から10月までスポーツにまつわるストーリーを募集し、同年11月30日をもってお気に入り作品の投票を締め切りました。全31作品(日本語:6、英語:19、スペイン語:7、ポルトガル語:1)が寄せられ、数作品は多言語による投稿でした。編集委員とニマ会の方々に、それぞれお気に入り作品の選考と投票をお願いしました。下記がお気に入りに選ばれた作品です。 

編集委員によるお気に入り作品

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執筆者について

メアリー・スナダ氏は夫のジョンと結婚して43年になり、ジェームズとデイビッドという二人の息子がいる。元小学校教員で、ロサンゼルス統一学区の小学校に36年勤めた。現在は、オレンジ郡仏教会、全米日系人博物館、ゴー・フォー・ブローク全米教育センターの会員。好きなことは、釣りやダンス、そして昔からの友人たちや新しい仲間と旅行をすること。ディスカバー・ニッケイへもしばしば寄稿している。

(2023年10月 更新)

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