日系(ニッケイ)—をめぐって
日系ってなんだろう。日系にかかわる人物、歴史、書物、映画、音楽など「日系」をめぐるさまざまな話題を、「No-No Boy」の翻訳を手がけたノンフィクションライターの川井龍介が自らの日系とのかかわりを中心にとりあげる。
このシリーズのストーリー
第41回(その3) 日・豪にルーツのある著者、クリスティン・パイパー氏に聞く — ファミリールーツとアイデンティティ
2024年1月5日 • 川井 龍介
その2を読む >> アイデンティティは内から作られる ——あなたのファミリーのルーツを詳しく教えていただけますか。あなたは、自分自身のアイデンティティをどのようにとらえていますか。アイデンティティに関して問題を感じたことはありますか。また、よかったと思うことはありますか。 CP: 私の両親は日本で初めて出会いました。母は千葉県船橋市の出身で、父はオーストラリアのバサーストという田舎町の出身です。大学では経済学と日本語を学び、1960年代に交…
第41回(その2) 日・豪にルーツのある著者、クリスティン・パイパー氏に聞く — オーストラリアの日系人
2023年12月29日 • 川井 龍介
その1を読む >> 収容所での日系人・日本人 ——『暗闇の後で』では、日系のオーストラリア人など、外国人と日本人の血を引く人物が登場します。彼らは、日本人と同じ収容所に入れられますが、当時彼らの置かれた立場はどのようなものだったのでしょうか。日本人と対立していたのでしょうか。 クリスティン・パイパー(CP): 軍の記録が保管されているオーストラリア国立公文書館で、リサーチのため多くの時間を費やしました。そこで私は日系のハーフなので、ミックス・レ…
第41回(その1) 日・豪にルーツのある著者、クリスティン・パイパー氏に聞く — 小説『暗闇の後で』誕生の経緯
2023年12月22日 • 川井 龍介
軍事のため人道に反した研究で精神を病んだ帝国大学医学部出身の茨木智和を主人公に、戦争を挟んでみ日本をはじめ、オーストラリアの日本人街や収容所を舞台に、茨木の心の葛藤や生き方を描いた小説『暗闇の後で 豪州ラブデー収容所の日本人医師』(原題は『After Darkness』2014年刊)が、2023年夏日本でも出版された。本書については前回の本コラムで紹介したが、日本とオーストラリアにルーツのある著者のクリスティン・パイパー(Christine Piper)氏に、本誕生の経…
第40回 戦時中のオーストラリア・日本人医師の物語
2023年11月24日 • 川井 龍介
収容所、防疫研究所、揺れる思い 太平洋戦争がはじまり、アメリカの日本人・日系人が「敵性外国人」とみなされ、収容所に隔離されたことはよく知られているが、オーストラリアでも同様の収容所があったことは一般にはあまり知られていない。 オーストラリアは第二次大戦で連合国に属し日本とは敵対関係にあり、日本軍はオーストラリア本土のダーウィンを空爆するなど攻撃をしかけた。当時、以前本コラムでも触れたように、明治時代から和歌山県を中心にオーストラリアへ真珠貝(白蝶貝)を採取するために渡っ…
第39回人種主義という構造的な差別
2023年11月10日 • 川井 龍介
「アメリカの人種主義」を読む 世界中でいまも「人種」をめぐる差別・対立は後を絶たない。特に「人種の坩堝」と言われてきたアメリカでは、黒人やアジア系の人びとに対する差別・偏見と思われる事件が繰り返し起きている。アメリカ社会のなかでマイノリティーである日系アメリカ人にとっては、決して無視できない問題だろう。 なぜ、こうした人種にもとづく問題が起きるのか。そもそも人種とはいったい何なのか。これまでアメリカ社会は、人種をどうとらえてきたのか。また、日系人・日系社会にとって人…
第38回 テレビ映画になったフロリダ移民
2023年10月27日 • 川井 龍介
マイアミ・ビーチの須藤幸太郎 ノンフィクションの本を書いて、読者から感想などをしたためたお便りをいただくことは、新たな発見もあり嬉しいものだ。一昨年、出版社経由で、2015年に出版した「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)を読んだという91歳の女性から手紙をもらった。 「大和コロニー」は、アメリカ・フロリダ州南部に日露戦争後に入植した日本人がつくった日本人村(コロニー)の顛末と、入植者の一人で最後まで現地に残り、所有する広大な土地を地元に寄贈した森…