日系(ニッケイ)—をめぐって
日系ってなんだろう。日系にかかわる人物、歴史、書物、映画、音楽など「日系」をめぐるさまざまな話題を、「No-No Boy」の翻訳を手がけたノンフィクションライターの川井龍介が自らの日系とのかかわりを中心にとりあげる。
このシリーズのストーリー
第51回 コンゴに置き去りにされた日本人の子
2024年8月23日 • 川井 龍介
『太陽の子』があぶりだす 『太陽の子』(集英社、2022年出版)というタイトルのノンフィクションを初めて店頭で見たとき、興味をひかれた。サブタイトルに「日本がアフリカに置き去りにした秘密」とあり、それがアフリカで日本人と現地の女性の間に生まれた何人もの子どもだったからだ。 1970年代から80年代にアフリカの中央部、コンゴ共和国(当時はコンゴ人民共和国)で鉱山事業に携わった、日本を代表する鉱山企業「日本鉱業」のもとで働いていた何人もの日本人男性が、現地の女性との間に…
第50回 アスリートと日系
2024年8月9日 • 川井 龍介
苦慮した中での国籍選択 パリオリンピックについて、日本のメディアは日本代表選手の動向、それも主としてメダルに絡んだ選手について何度も熱心に報じている。外国の選手の活躍や、マイナーな競技についても知りたいところだが、なかなかこれらは扱われない。 そんななかあるとき新聞の「日本出身の出口クリスタが金メダル」という見出しに目をひかれた。「日本人」とか「日本の」ではなく、「日本出身」という表現にである。彼女は柔道女子57キロ級のカナダ代表選手だが、生まれも育ちも日本なのであ…
第49回 日本国民、日本人、日系(ニッケイ)
2024年7月26日 • 川井 龍介
日本人とは何か? ミスコンテストでの議論を通して、前回本欄で考えてみた。いろいろな定義や日本人像はあるだろうが、結局「日本人」というものは定義できないようだ。その一方で、「日本国民」は、「日本国籍をもっている人」と定義できる。 現在、テレビで放送され人気を博しているNHKの連続ドラマ小説「虎に翼」は、女性法律家の生涯を描いているが、そのなかで日本国憲法の話がたびたび登場する。たとえば、法の下の平等を謳った憲法14条(以下)である。 「すべて国民は、法の下に平等であつて…
第48回 日本人らしさとは?
2024年7月12日 • 川井 龍介
問題は国籍? 血筋? パリ・オリンピックが間もなくはじまり、各競技とも日本代表の内定選手が次々と発表されているが、そのなかには、外国にもルーツをもつ選手も数多くいる。テニスの大坂なおみ(父がハイチ出身)をはじめ、男子バスケットボールの八村塁(父がベナン出身)、女子バスケットボールの馬瓜エブリン(両親がガーナ出身)、陸上男子100メートルのサニブラウン・アブデル・ハキーム(父がガーナ出身)、同じく110メートルハードルの村竹ラシッド(父がトーゴ出身)などだ…
第47回 日本人の海外移住
2024年6月28日 • 川井 龍介
海外在留の日本人は129万4000人 近年、日本を出て海外で暮らす日本人が増えているという。それは日本の国力の衰えを反映しているのだろうか。それとも日本にない何かをもとめて飛び出そうという日本人が増えたからだろうか。 このほど出版された『流出する日本人 海外移住の光と影』(大石奈々著、中公新書)は、近年の海外移住の最前線を調査し、移住の実態とその背景にある事情を解き明かしている。 現代の移住には、企業からの派遣をはじめ、留学やワーキングホリデーのように働きながら学…
第46回 南北戦争で従軍した日本人がいた?「南北戦争を戦った日本人ー幕末の環太平洋移民史」を読む
2024年6月14日 • 川井 龍介
アメリカの南北戦争(1861年4月〜65年5月)といえば、奴隷制度の存続などをめぐるアメリカの内戦であり、西部劇の舞台やテーマとしてテレビや映画で観るくらいのものというのが一般の日本人の理解ではないだろうか。日本との接点はありそうもない。 しかし、この南北戦争に実は二人の日本人が兵士として従軍していたという。いったいどういうことか。だれがなぜ従軍していたのか。素朴な疑問もさるころながら、アメリカの移民史という観点からも非常に興味をそそられる。 他国の戦争に従軍する日…
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